釜山はプサンなのかブサンなのか?

アンニョンハセヨ!久しぶりに韓国語についての内容です。
元日本語教師で今は韓国語の翻訳をやっている夫に書かせました。
外国語をカタカナにしたり、ルビを振ったりするのは外国語学習としては良くないですが、レシピを書いているとどうしてもカタカナにしなければならないときがあります。地名もそうですね。
釜山は漢字があるし、よく知られているのであまり問題にならないですが、カタカナの表記では「プサン」と書いてローマ字表記のBUSANというのを見て、「あれ?」と思う日本の方も多いのではないでしょうか。
夫は、「初歩のうちは、キムチもギムチのほうが良い」と言っています。日本語話者が発音すると、「김치」が「킴치」、あるいは「키무치」になりがちだからだそうです。
下記の記事でその意味が分かりました。基本的にはハングルが読める人向けの内容ですが皆さんの参考になれば嬉しいです!
▼韓国語の文字とパッチムについてはこちら
有声音化。語頭のㄱㄷㅂㅈは清音か濁音か
韓国語の教科書では、発音の変化のところに、「有声音化」が出てきます。有声音化とは、喉が震える音になる、つまり濁音化を意味します。
詳しく見ると、「ㄱ(k) ㄷ(t) ㅂ(p) ㅈ(ch)」の四つの子音が、濁音化「ㄱ(g) ㄷ(d) ㅂ(b) ㅈ(j)」するということで、下記の二つのパターンで発生すると言います。
- 母音で終わる(=パッチムがない)文字の後
- パッチム「ㄴ ㄹ ㅁ ㅇ」の後
「……の後は」濁音化する、ということは、語頭では清音(濁らない)ということです。
この理屈でいくと、釜山はPUSANであり、夫婦を意味する「부부」はPUBUとなります。
ですが、日本語話者の場合、BUSAN、BUBUと発音したほうが、韓国語話者にとってむしろ良い発音に聞こえている可能性があります。
韓国語は清音か濁音かによって単語の区別をしない
日本語話者にとって清音か濁音かというのは単語の区別において重要であり、区別できないと混乱が生じてしまいます。
- 蚊と蛾
- 金と銀
- パリとバリ
- 多彩とダサい
- 地下と時価
日本語話者にとってこれらの単語はまったく意味が異なり、聞き分けも容易ですが、韓国語話者にとっては聞き分けが難しい場合があります。韓国語には清音か濁音かによって単語の区別をしないからです。ですが、清音と濁音がないわけでなく、単語の区別に使わないだけなので、その点は間違わないでください。
韓国の釜山はアルファベット表記だとBUSANとなっています。釜山国際映画祭の略字も以前はPIFFでしたが、今はBIFFとなっています。金浦空港もGINPOです。これは発音記号ではなく表記のルールなので、発音自体が変わったという意味ではないです。
今も昔も「부산」は「부산」だし、「김포」は「김포」ですが、韓国語話者にとってはPUSANとBUSANは表記を変更しても問題ないということでしょう。PとBの音は両方あるけど、単語の区別には使用しないからです。日本語では「東京のローマ字表記を今日からDOKYOにします」とは絶対になりません。
韓国語は有気音か無気音かによって単語の区別をする
一方、韓国語にあって日本語にない単語の分別方法に有気音と無気音があります。
「ㅋ ㅌ ㅍ ㅊ」この四つは韓国語の教科書的には「激音」と言って、有気音です。日本語では結果的に有気音で発音される単語はあっても、単語の区別には使いません。そういう意味では「日本語にはない」と言えます。
ややこしいのはこの四つの有気音は清音であり、濁らないことです。「ㅋ ㅌ ㅍ ㅊ」はそれぞれ「ㄱ ㄷ ㅂ ㅈ」に一本足したような形ですが、これらは発音時に呼気を伴う、つまり呼気が有る「有気」音であるという考え方で良いと思います。
「ㄱ ㄷ ㅂ ㅈ」四つの子音が語頭にきたときは濁音(無気音)で良い、むしろそのほうが発音が綺麗、というのは、★この「ㅋ ㅌ ㅍ ㅊ」四つの激音(有気音)があるためです。韓国語にとっては清音か濁音かよりも、有気音か無気音かの違いのほうがずっと重要なのです。
有気音か無気音かによって意味が変わる単語には、たとえば以下のようなものがあります。
| 無気音 | 意味 | 有気音 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 고기 | 肉 | 코기 | 犬の種類(コーギー) |
| 달 | 月 | 탈 | 仮面 |
| 발 | 足 | 팔 | 腕 |
| 집 | 家 | 칩 | チップ |
| 자 | 定規 | 차 | 車 |
| 돈 | お金 | 톤 | トン(重量単位) |
| 병 | 瓶、病気 | 평 | 平、平方(単位) |
| 배 | 船/お腹/梨 | 패 | 組、敗れる |
初級の教科書では、肉はコギ、月はタル、足はパル、家はチプとフリガナが振ってあると思いますが、私の言いたいのは、これらをゴギ、ダル、バル、ジプとしたほうが韓国人にはきれいに聞こえていると思いますよ、ということです。
さらに言えば、김치をキムチではなく、ギムチと発音したほうが良いかもしれませんよ、ということです。実際に、김치のローマ字表記はGIMCHIも使われていて、ルール的にはGIMCHIのほうが正しいけど、KIMCHIが広く知られているため、こちらも許容しますという状況のようです。
もちろん理想的なのは、肉は고기、月は달、足は발、家は집と発音することです。そして語頭の「ㄱ ㄷ ㅂ ㅈ」を正しく発音するのは、清音か濁音かは重要ではなく、★無気音で発音するのが必須であるということです。

日本語による韓国語への影響とおすすめの勉強方法
また日本語は高低アクセントによって単語の区別をし、一つ目の音と二つ目の音の高さが必ず異なるという特徴があります。その影響で日本語話者は韓国語の語頭の音を強く発音しがちです。私も以前、韓国人から指摘されたことがあります。
清音を強く発音すると、呼気が入ってしまうため、有気音になってしまうことが多いです。つまり日本人がPUSANと発音すると、PUが有気音になりやすく、「푸산」になってしまうのです。それは「달」が「탈」に、「발」が「팔」に、「돈」が「톤」になることを意味します。あるいは「김치」が「킴치」に。
文章でも同様で、「私は日本人です」を韓国語でいうと、「저는 일본인입니다」ですが、カタカナで「チョヌンイルボニンイムニダ」と覚えてしまうと、「처는」と聞こえてしまいがちです。なので、
またソウルの発音は基本平板なので、日本語のように高低をつけると、方言のように聞こえてしまいます。韓国語がある程度話せる日本語話者は「発音がかわいい」などと言われたことがあるかもしれませんが、それにはこんな背景があるかもしれません。
なので、日本語で言う五十音図にあたる韓国語の反切表を覚えるときは、カナダラマパサアジャチャカタパハと覚えずに、ガナダラマバサアジャチャカタパハと「ㄱ ㄷ ㅂ ㅈ」は基本、濁音で覚えるのをおすすめします。
韓国語の発音の勉強をすすめると、一番簡単だと思っていた平音が一番難しいと気づくと思います。呼気のあるなしは日本語の発音で意識されていないからです。意識して呼気を入れる激音は比較的容易ですが、「意識して出さない」平音は難しいのです。なので濁音が無気音であることを利用して、一度、GIMCHIと発音してから김치と発音するのがよい練習法になったりもします。
ここからは余談ですが、では「ㄱ ㄷ ㅂ ㅈ」が文中で「清音になる・濁音化しない」のをどう覚えれば良いのか。私は規則ではなく、文章全体でそのまま覚えることをおすすめします。というか、ルールは覚えなくていいし、韓国人でもルールを説明できる人はほとんどいません。
例えば、「あの方は韓国の方です」は「저분은 한국분이세요.」ですが、フリガナを振れば、「ジョブヌンハングップニセヨ」となります。「あの方」と「韓国の方」と二つの「方」が出てきますが、前はBUN(濁る)、後ろはPUN(濁らない)です。
同じ単語でも場所によって発音が変わるため、単語単体で覚えるのは非効率的です。まず文章で発音を覚えてしまい、あとから法則を見つける帰納法的な学習が韓国語の場合は効率的だと思います。